2020年7月の初めにクワガタを飼うことになってしまいました。
この日の朝はいつもと違い、妻が急ぎの仕事のため先に家を後にしていました。いつもは一緒に出勤しているのです。妻が出掛けてしばらくすると、私も家を後にしました。家を出てすぐに、マンションの外廊下に黒い虫が仰向けになっていたのを見つけました。近づいてよく見てみると、なかなか立派なオスのクワガタでした。
私はちゅうちょせずに捕まえて家に戻りました。適当な入れ物がなかったので、やや大き目の食器にそのクワガタを入れました。アルミホイルで簡易的な入れ物をつくり、家にあったメープルシロップを注いで、クワガタの入った食器に入れました。
ゆっくりしている時間はなかったので、食器に少しだけ空気が通る隙間を残して食品用ラップフィルムで蓋をし、作業机の上において再び出勤しました。
その日一日は普段どおり仕事をしました。仕事中にこのクワガタが気になるということはありませんでした。
仕事が終わって帰宅し、クワガタをまじまじと観察しました。朝と同様に立派なクワガタと思いました。早速インターネットで調べてみると「ミヤマクワガタ」であることが分かりました。頭部に冠のような(あるいは耳のような)突起があるのが特徴で、すぐにミヤマクワガタであることが分かりました。
大きさは約65ミリメートルほどで、標準的な大きさのようでした。ミヤマクワガタは、体に金色に見える細かな毛が生えているのも特徴で、日本全土に分布しているクワガタのようです。ミヤマクワガタの大アゴの形状は、ヤマ型(基本型)、フジ型(サト型)、エゾ型の3種類があるようです。私が見つけた個体はおそらくエゾ型だと思いました。
妻にクワガタのことを話すと、まぁまぁ本気で嫌がっていました。実は妻も私と同じようにマンションの外廊下で仰向けになっていたクワガタを見つけていたのですが、私とは違って無視したようでした。私の妻だけではなく他の人たちも、昆虫は苦手という場合が少なくないと私は理解しています。
いつまでも食器に入れておくわけにはいかなかったので、オンラインでガラスケースと土の代わりになるヒノキのおがくずチップを購入しました。私が捕まえたミヤマクワガタはメープルシロップを問題なく食べていたようでしたが、昆虫ゼリーを木の枝と一緒に100円ショップで買ってきました。残念ながら100円ショップの昆虫ゼリーはあまり気に入らなかったようで、後日、ホームセンターでもうちょっと高額の別の昆虫ゼリーを購入してきました。
ミヤマクワガタは、冷涼湿潤(レイリョウシツジュン)な環境を好むようだったので、水道水を霧吹きでスプレーしガラスケースの中の湿度を保つようにしました。カビが生えてきてしまい、ヒノキのおがくずチップや木の枝は定期的に交換が必要でした。ガラスケースにはハンカチをかけて、暗い環境をつくりました。
いろいろ調べてみると、一度捕獲した昆虫は死んでしまうまで責任を持って飼うことが必要なようです。安易に自然環境に放してしまうと環境を壊してしまう可能性があり、よくないようです。亡骸も燃えるゴミとして処分するのが一番のようです。標本もよいようですが、私にとっては(妻もいることですし)難しそうです。
ミヤマクワガタの成虫は越冬せずに夏の終り(8月後半)には死んでしまうようです。それまでは大事に飼っていきたいと思います。
追記[2020.9.4]ミヤマクワガタの死
梅雨が明けた8月中旬から9月にかけてミヤマクワガタはとても元気にガラスケースの中を動いていて食欲も旺盛だったのですが、9月に入ったばかりの夕方にガラスケースの中でひっくり返っていました。正しい姿勢に戻してあげても、まるで電池が突然切れたように動きが鈍くなっていました。
次の日にはほとんど動かなくなっていて、正に虫の息といったところでした。特に私にできることもなかったので、ガラスケースの中にそっとしておきました。その次の日の夕方、帰宅した後に持ち上げてみると死んでいるのが分かりました。頭部、胸部、腹部を繋いでいる部分がすっかり緩くなっていました。
8月が終わると、まるで決められていたかのように(決められていたのだと思います)急に動かなくなって死んでしまいましたが、7月の初旬から約2ヶ月弱の間、ミヤマクワガタを飼ったことは思っていた以上に記憶に残りました。